ACT26:何も止まらない






また各地で大きな霊圧の衝突を感じた。


卍解の霊圧も確認できる。


時間は刻一刻と迫るぱかり…。



―…間に合うか?



の表情が段々と険しくなっていく。



「―――っ!!」



思わず顔を上げ、そちらへ視線を走らせる。



―はじまった!急がないと…!!



「な…何だろうあれ…?」



織姫は困惑した表情を浮かべていた。



「…始まったかな?処刑」


「え!?それなら急がないと…!」



やちるが何気なく言った言葉に、石田が焦りの声を上げた。



「………」


「…あたし、先行くね」


「ええっ!?なんで…」



織姫が目を見開いて驚く。



「処刑はどっちでもいいんだけど、あそこにはいっちーが来てるかもしんないからね。

 いっちーは手伝ってやんないとね。」


「あ……ありがとう…」



織姫は一瞬キョトンとしたあと、すぐに表情を崩して礼を言った。



「いっちー助けんのなんてあたりまえじゃん!

 だっていっちーは、剣ちゃんのともだちだもん。」



それにもフッと笑うと、続いて口を開いた。



「あ、草鹿副隊長!私も一緒に行きまーす!」


「へっ?ちゃ…」



また驚いて、今度はを振り替えった織姫。

しかしその言葉はやちるによって遮られた。



「わかったー。テキトーに着いてきて?


 ―そんじゃ行くね!

 つよいやつはあたしが片しとくからねっ!ザコはよろしく!」



より先に踏み込んだやちるは、物凄い勢いで見えなくなってしまった。



「じゃっそいうこで。みんなも出来るだけ早くきてね?」



やちるの速さに度肝を抜いている面々に、はヘラヘラ笑いながら言った。



「ぇえっ…!?ちょっ、さん…あれに追いつけるのかい?」


「問題ないよー?」



そう言って表情を崩したまま、は瞬歩でその場から消えた。

いや、彼らには消えたように見えた。



―…もう、隠す必要もなくなるから。



は銀髪を靡かせ、双極の丘へと向かった。


















―と、その途中…



見事、牢を脱走し、姿を眩ましていた阿散井の霊圧を感じた。

無視して通過してもいいが、彼はルキア救出に必要な人物でもある。



―しかし、それも遅刻じゃぁちょっと格好悪いなぁ。



と、そちらへ方向転換して、一足飛びに駆けた。



「―そんな走りじゃ間に合わないよ?」



はクスリと笑って、阿散井の隣りを走った。



「―っ誰だてめぇ!?」



警戒心を露にした阿散井が、を鋭く睨みつけた。



「四番隊・十四救護班所属、です。忘れちゃいました?」



……って、テメェっあん時の!」



―どうやら髪の色が違ったせいで気付かなかったようだ。



―そんなにわからないモノかな?

と内心では首を傾げつつ……それはさておき。



「あ、覚えてたんだ。っと、そんなことより!

 このままだと、間に合わないからちょっと失礼ー!」



阿散井の背後へ手を伸ばし、腰紐をガシリと掴んだ。



「な、何すんだよ!走りにくいじゃねぇか!」



阿散井が抗議の声を上げるが、そんな言葉は今のの耳には入らない。



「んじゃぁ行きますか!」



右手にグッと力を入れると、阿散井の身体が前のめりに倒れた。



「―うぉっ!?」


「落とさないから暴れないでね?」



まるで荷物を持ち運ぶかのように、阿散井を左手にぶら下げて、

は今度こそ双極の丘へと走り出した。



「―ギャーッ!!かっ、カオ!顔!!擦れるっつーのォー!!」



……そんな叫び声をBGMに。

























「……一護」



―双極の丘。

 そこより少し下手にある枯木林の影。



斬魄刀百万本に値する破壊能力を持つもつといわれる、双極の矛。

それを止めた一護を、はそこから静かに見つめていた。



隣りには、そんなシリアスな雰囲気も打ち壊しなほど、暴れている阿散井がいるが……。



―今にも出て行きたくて仕様がないらしい。



その気持ちが分からないわけではないが、しかし。



―物事には順序とタイミングというものがある。



まだその時ではないため、とりあえず阿散井を片手で捕まえて抑えていた。

双極の鳥、それが第二撃のために距離をとった。



―まずい、な……。



は微かに表情を険しくする。



先程は不意打ちだったために止められたが、二撃目は確実に狙って来るはずだ。



―どうする?



は右手を斬魄刀に手をかけた。



―行くしか……!!



阿散井を放り投げる寸前、そこへ遅れて駆け付けた人物がいた。



―……―っ十四郎……!!



後ろには部下を二人伴っていた。



しかし、の脳裏では一瞬にして、あの夜のことが色鮮やかに浮かび上がってくる。



『―……やるしかないな。』



あの言葉の意味が、今、わかった。



―真剣な眼差し

―堂々とした姿勢

―真っ直ぐな心



―そして、誰よりも優しい笑顔





―あぁ、やっぱり……彼が好きだ。





それは一護とルキアを助けること、一瞬忘れてしまうくらいに。

今まで失敗することを恐れていた気持ちや、妙に焦っていた気持ちが、

嘘のように解けていくのがわかった。



―不覚にも、こんな時に見惚れてしまうなんて情けない。



は小さく首を振った。





浮竹が駆けつけると、そこへ京楽が待ってましたと言わんばかりに、隣りに並んだ。



四楓院家の紋をもつ、盾のような代物

斬魄刀を片手に握る彼らの目的は……



―双極の破壊



それは一護に攻撃が届く前に破壊されることとなった。

結果だけ言えば、一護が彼らに助けられることとなったわけだが……



にとって予想もつかなかった出来ごとだったか……?



決してそうではないだろう。

あえて、考えることを無意識のうちにしなかった。

そうとしか言いようが無い。何故なら……



―少し考えれば付き合いの長いには、容易に分かってしまうことだから。



―彼がどれだけ部下思いであるかなんて、そんなことは今更、である。










は、浮竹と京楽に視線を向けた。



一方、思わぬ妨害の数々と突然現れた人物に、

その場に同席する隊長格たちは動揺の色を隠せないでいた。



「―役者は揃ったね……それじゃぁ行きますか。」



苦笑交じりに、は掴んでいた阿散井の後ろ襟をパッと放した。


急に開放された阿散井は、勢い余ってつんのめりになるものの、

何とか踏み止どまって一護とルキアの二人を見上げた。



一方一護は、ルキアを拘束していた磔架を破壊し、

何を思ったか…ルキアを掴み上げて大きく振りかぶった。



―ま、まさか……?



疑問の声を投げ掛ける間もなく、一護は彼女をモノと同じように投げ飛ばした。


否、阿散井に向かって送球、パスしたと言えばいいのか。



ともかくその行為が、人々の度肝を抜いたことに変わりはない。



「ホント無茶苦茶だなぁー……」



それにはも深く溜め息をついた。

投げられたルキアや、それを受け止めた阿散井は堪ったものでない。


口々に文句を言っていたが、結果良ければすべてよし。



―ちゃんとに連れてきて本当によかった。



と、安堵の息をつく。



それこそ、今まで引き止めておいた甲斐があったというものだ。

肉体労働は好きじゃないというが、珍しく動き回ったのだから。



―あと、もう少し……。



の中でのカウントダウンは始まった。

遠くで、歯車の軋む音が聞こえる。



も覚悟を決めて、その場へと駆け出した。



「―…一護!お待たせー!!」



阿散井の隣りに立つと、手をヒラヒラと振ってその存在を主張する。


すると、一護も気付いてくれたようだ。

グッと拳をこちらに向けた。



「この格好付け男め…。ま、今回はその功労につき、からかわないであげよう。

 ということで…、ルキアお待たせ!んじゃぁ、サクッと逃げよっかー?」



「っ…!これは…!!」



阿散井の腕の中にいるルキアが、必死に何かを言おうとしている。



「はいはい。文句は全部終わってから聴くからね?

 それまで大人しく彼に運ばれて下さい。じゃぁ阿散井副隊長よろしく!」



少々戸惑ったような表情をしてはいたものの、力強く頷いて彼はすぐさま駆け出した。



「青春だー。盗んだバイクで走り出す?

 っていうより、結婚式会場から花嫁強奪って感じ。」



うんうんと頷くに、緊張感は見られない。

いや、本当は余裕がないのを悟らせないために、ワザとやっているのだけれど…



それをわかる者がこの場に何人いるだろうか。






―新婦はルキア。


 妨害した友人その1が一護。


 同じく第二妨害をした上司その1が十四郎。


 それに便乗した上司その2が春水。 


 攫った友人その2が阿散井副隊長。


 手助けした友人その3が





―……新郎はだーれだ?
















Back  Menu  Next