ACT25:爆走・愉快な仲間たち
―四番隊所属・、只今ひたすら疾走中。
……中訳すると、それは十一番隊に席を置く隊員たち数名に混じって、
瀞霊廷内の何処かの通路を、だ。
何故、そのようなことになっているのか…まぁそれは色々事情があってのこと。
現在、先頭に隊長の更木剣八がおり、その背にやちると織姫が乗っていた。
そしてそれを追いかけ、斑目一角が続き、綾瀬川弓親とが並走。
最後に荒巻という平隊員、という計7名が行動を共にしていた。
向かう先は四番隊・総合救護詰所。
本当はが道案内をすべきなのだろうが、さすがに三人も更木の背に乗るのは
(いろんな意味で)厳しい。
だからと言って、体力的に劣る織姫を走らせるのは忍びない。
もちろん、やちるを降ろすなど論外。
そのため、本人立っての『面倒臭いから適当でいいんじゃないですか?』という
明らかにやる気の無い理由から、とりあえず一行は霊圧を頼りに走っていた。
―そのときはまさか、ここまで迷走することになろうとは思ってもみなかったが。
ちなみにその道中は、いろいろな意味で笑いあり涙ありの連続だった。
十一番隊の隊員が掃除をさぼっている現場に出くわしたり、
やちるの見当違いな道案内に、何度か行き止まりに行き当たったり……。
「織姫ちゃんかに任せた方がいいんじゃないスか?
副隊長探査能力に関しちゃ無能もいいとこなんだし。」
一行はまた行き止まりにぶち当たり、立ち往生していた。
先ほどから、織姫が助言しようと口を開くが、
やちるがそれをことごとく妨害するので話が進まない。
そこで見兼ねた一角が、さらりと(事実ではあるが)酷い言葉を、投げ掛けたのだった。
「うるさい、ぱちんこ玉」
―ぺっ、とやちるが唾を吐き、見事一角の頭に命中する。
……いつにもましてその頭部がピカピカと輝きを増した。
―眩しいなぁ…。
そんな呑気なことを考えているの視線の先、
そこには今にも刀を抜きそうな一角と、それを宥める弓親がいた。
そのやりとりは、とてもテンポがよく手慣れている。
―どうやら十一番隊ではこれが日常茶飯事らしい。
は一人納得した。
自分に害さえなければ見てる分には十分面白い光景だ。
ちなみに、それを楽しんでいるのを隠しにしつつ、
そのノリについていけないフりをして、すでに傍観を決め込んでしまっているのは内緒だ。
―それからしばらくして。
更木率いる一行は、なんとか無事に……ようやっとといった感じで目的地に付いた。
……が、しかし。
もちろん彼らはの言葉など聞くわけもなく、
ひたすら救護詰所の中を破壊活動をしながら突き進む。
―…ドゴォン!
「ギャーー!!」
「なにをなさいます!」
―ゴシャァ…!
「ヒーーっ!?」
―ゴォン!
「ご乱心!!ご乱心!!」
―ベキ!!ベキベキ…!
……被害にあった同僚たちには、とても申し訳ない気持ちでいっぱいになるであった。
―ごめんね、君たちの犠牲を無駄にはしないよ。
少々見当違いなことを一人、物陰でこっそりと、涙を拭いつつ謝罪した。
そして少し離れたところで、織姫がある一点を指した。
更木がそこで立ち止まったかと思うと、力技で床に穴をぶち開けたではないか。
―誰が修理するのかなぁ……。
は仮にも、いや、正真正銘四番隊隊員の一員だ。
そのためだろうか、隊舎が容赦なく壊されていく様は、を少々物哀しい気分にさせた。
危うく当初の目的を忘れそうになる自分を叱咤しつつ、
破壊されていく壁や床の心配をしていると、
下の部屋から叫ぶ声にようやく彼らの存在を思い出した。
―…まさか押し潰されてないよね?
と、少々心配しつつ、更木たちに次いで下へ飛び下りた。
「ざーーーざざざざざ更木剣八!!!十一番隊隊長!!!と…」
―この声は岩鷲だな、は確信した。
「あーーーっ!!てめーあん時の変態オカッパナルシスト!!」
―いい得て妙……、いや、どちらかというと的を射てる表現だ。
弓親が不機嫌になるものの、今はそれどころではない。
「石田くん、茶渡くん、岩鷲くん!!みんな無事だったんだね!よかった!!」
「い…井上さん!?」
は一応、織姫に彼らが無事であることを伝えてはいたが、
やはり実際に自分の目で確認しないことには不安なものだ。
こうしてちゃんと再会できたことは、少なくとも彼女に安心感を与えたに違いなかった。
「約束通り…というか、まぁ予定よりかなり強行突破になったけど。迎えに来たよ?」
が苦笑混じりの顔を向け、ヒラヒラと手を振った。
「……」
「再会した喜びのコメントはさておき、ここに長居は無用だよ?とにかく行こう…」
はあっという間に三人の手錠を外すと、それをポイッと隅っこに放り投げた。
「い、いつの間に鍵を……?」
「うふふ…内緒だよ。」
この瞬間、石田の、に関する謎が一つ増えた。
そして一同はバタバタしつつも、急いで四番隊・総合救護詰所を出た。
のはいいのだが……
「あ…えーっと…、何ていうか…まあ…、道案内なんて運みたいなもんだし…」
「10回や20回ぐらい行き止まりに着くこともあるよね!」
―いやいや、二人ともフォローになってないから。
と、は耳を赤くして黙りこんでいるやちるを見て、こっそり苦笑した。
そう、またもや行き止まり地獄…。
「ホレ見ろ、言わんこっちゃねー。だから副隊長の道案内はイヤだっつッたんスよ」
大人気ない一角の発言に反論出来ないやちるは、そのつるりとした頭に噛み付いた。
「うわぁ!やめろコラ!汚ね…うおおおおッ!?」
その攻防を、は場違いにもまた微笑ましく見守っていた。
―うーん……いち、にぃー、さん……四人か。
「…隊長…」
弓親が同じく感づいたようで、剣八に話しかけた。
「コソコソしやがってみっともねぇ連中だ…。
出て来いよ。霊圧消して隠れるなんざ、隊長格のすることじゃねェだろうが。」
その言葉に反論しつつ、四人が一斉に現れた。
「「「「「――――!!!!」」」」」
―へぇ……
「旅禍を連れて何処へ逃げる?敗れて誇りまで失ったか、更木。」
―七番隊の狛村に、射場…。
八番隊の東仙と檜佐木、か。
隊長、副隊長ともに二人ずつ。
―数の上では有利だけどさ…。
戦力外の者もいるため、現状、人数に関しては全く意味を持たない。
……更木は四対一でやる気満々のようだが。
―向こうは馬鹿にされてるとしか思わないだろうね。
「…関係、ない…か。」
やりたいと言っている者を、到底、止める気にはならない。
先の一護の一件からもわかる通り、彼はどうやら戦うことが生きがいのようだから。
「剣ちゃん、あんな楽しそうなのにジャマしちゃダメ」
と、そこでやちるが口を開いた。
「剣ちゃーん!!
あたしたち、さっきのいっちー捜しの続きやってるねー!
剣ちゃんもはやく来てね!!」
「あァ、すぐ行く」
そんなやりとりに、はまた小さく笑った。
信頼から出てくる言葉の数々。
それは何故か聞いていてとても心地よかった。
不思議と、負ける不安さえ感じない。
やちるに引っ張られ、残りの面々は走り出した。
しかし織姫はやはり心配なようで、やちるに聞き返していた。
「ほ…本当に、これでよかったの?更木さん一人置いてきちゃって…」
「あたりまえじゃん!相手が誰でも剣ちゃんが負けるわけないもん!!」
「やちるちゃん…」
満面の笑みで返事を返すやちるの言葉に偽りはない。
―あの時、彼を信じられたら、どんなによかっただろうか。
信頼するということは、なによりも難しい。
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