ACT20:共に過ごした時間
「ところで一護は?」
自分のことが一段落し、少し気が楽になったせいか、
ふと一護が何処にいるのか知らないことに気付いた。
「黒崎君?」
「一護か…」
「黒崎なら…」
3人がそれぞれに反応を見せた。
すると突然―ズズンッ!!!!と、物凄い霊圧が建物全体にのし掛かった。
「むっ……!?」
「…なっ!!?」
「これはっ!?」
「……一護か!!」
真っ先にが部屋から飛び出した。
そして、それに続くように3人も駆け出す。
「―っ何やってるんだよ!一護!!」
霊圧の出所へ走りながら、は小さく舌打ちした。
―こんな事なら、はじめから空鶴に一護が何やってるのか聞いとけばよかった…!
―そして着いた先は『練武場』
そこには膨大な霊圧を放出している一護と、腰を抜かしている青年がいた。
「あれは……」
一護の手の中にある球体の物。
あれはそう、確か『霊珠核』だ。
「…そういうことか」
今の状況を瞬時に理解し、は額を押さえた。
と、そこに同じく慌てた様子の空鶴が駆け付けてきた。
「何だ!?一体どうした岩鷲!?何があった!?」
―『岩鷲』?……あぁ!彼が、あの!
少々呑気ではあるが、その言葉からさり気なく青年の正体を知った。
「ご…ごめん姉ちゃん…、俺…コツを教えてやっただけなんだ…。
それが…こんなことになるなんて…、思いもしなかったんだ…!」
―コツ、ねぇ……。
はふむ、と額に当てていた手を顎に持ってきた。
…一護は人一倍不器用な分、そのきっかけさえ掴めれば上達は早いのか。
一人納得してみた。
さて一方…
―スパン!!と勢いよく襖を開け、空鶴が大きな声で怒鳴った。
「バカ野郎!!何してんだてめぇ!!!さっさと霊力を固めやがれ!!!」
まさにそれは鶴の一声。
その声にハッとしたように、一護が霊圧を圧縮していく。
「…で…できたっ!!」
初成功のようだ。
霊子隔壁が綺麗に丸く出来上がっている。
「や…やったね黒崎君!!」
「おォ!!」
一護と織姫の微笑ましいやり取り。
これで問題はすべて解決。と、思いきや…
「ば…バカ野郎!!急に集中を解くんじゃねぇっ!!」
「…え?」
「げっ…!!」
―ズドォォ…ン…!!
空鶴の咄嗟の注意もむなしく、見事に爆発した。
幸い、空鶴・岩鷲は無傷。石田・織姫もチャドが庇い問題なく済み、
も持ち前の素早さでちゃっかり回避していた。
「ハナシを聞ぃてなかったのかてめぇは!?」
…空鶴がキレた。
「言っただろうが『集中乱したらドカンだ』って!
あァ!?言ってなかったかおれ!?…なぁ?」
―怖っ…!
サッとは本能的に襖の影に身を潜めた。
「そうだぞ!!大体てめーが…がふッ!」
―あ、あれは…痛い…!
岩鷲が空鶴の鉄拳を食らった。
「てめーも同罪だボケ!」
「そ…そんなあ!」
―うわぁ…。
ゲシゲシと蹴られる岩鷲と一護。
その二人を遠巻きに見つつ、それが治まるのをは物陰からひっそりと待っていた。
「―ったく、まぁいい。」
ようやく空鶴の攻撃が止んだことに、ホッとしたのはだけではないだろう。
胸を撫で下ろしつつゆっくりと襖の影から這い出た。
「―で、何から話すんだ?」
が声を掛ける前に空鶴に先を越された。
「…えぇーっとねー」
頭を掻きつつ、顔は苦笑い。
何せ突然話が回って来たのだ。
空鶴の手前、何も考えてなかったとは言えない。
流れ的に、自然とみんなの注目を集めてしまったが、
どうしようかと思いつつ、とりあえず口を開く。
「じゃぁとりあえ「あぁあああぁぁぁーーーっ!!!!!?」
を指さしつつ、物凄い勢いで壁に後退していった人物。
言わずもがな、一護である。
「あ、一護久し「なっ!なんでがここに居んだよ!!?」
「いや、だから今「夢!?そうかこれは夢だな!!?」っそれを話そうと…」
が説明をする前に―ドコォっ!!という鈍い音が響いた。
「いちいちうるせぇんだよ!あぁ!?」
ピクピク痙攣している一護に、皆心の中で合掌した。
「―と、まぁそういうことで。
喜助と夜一さん、空鶴の3人とは前からの知り合いなんだ。」
―わかってくれたかな?と、はみんなを見回した。
すると、一護がワナワナと拳を震わせて、ギロリとを睨み付けた。
「オイコラ。ちょっと待て。何が『そういうことで』だ!説明モロ省いてんじゃねぇか!!」
「あーうん、ごめん。ついノリで。」
「ノリかよ!つーか、ついってなんだ!ついって!!」
「よし!じゃぁ今からちゃんと説明しまーす。みんな聞いてね?」
「最初からやれよ!」
一護の突っ込みが入ったが、そこはあえてスルーの方向で話を切り出した。
「じゃまず、これは先に織姫たちに話したことだけど
『護廷十三隊、四番隊・第十三救護班隊員』
それが死神、としての肩書きだね。」
ふと、その一言を皮切りに、の纏う雰囲気が変わった。
いや、変わったように一護や織姫たちが感じたのだ。
「それで一護は知らないと思うから言っておくけど、
基本的に四番隊は救護中心の隊だから、
諸々の戦闘行為…つまり実戦に出ることもほとんどない。
護廷十三隊の死神の中でも最弱、非戦闘員に数えられる隊なんだ。
そこまでまず、いい?」
自分でそう言ってて少々悲しくなるが、そこは我慢。
皆に確認をとるに、一護は何か言いたそうな顔を向けていたが、しかし。
空鶴が睨みをきかせているため、下手に口出しができない。
「うん、じゃぁ次ね。ぶっちゃけ朽木さん、
ルキアがこっちに連れ戻された件に関して、私は全く関与していない。
技術開発局が偶然にも、物凄ーく面倒臭いことに、勝手に発見しただけだから。
恨むなら十二番隊を心の底から恨め!そこの所よろしく!」
その言葉の端々からもわかるように、は技術開発局があまり好きでは無いようだ。
空鶴は心底、呆れた表情をしていた。
「―で、ここからが本題なんだけど」
は一度、ぐるりと視線を巡らせた。
「『私』が一体『何者』なのか、知りたいでしょ?」
「「「「!!!!!」」」」
それはこの場にいる空鶴と他数名を除く、誰もが一番疑問に思っていたことだ。
しかしここでもやはり、空鶴が睨みを利かせていたため、
皆なかなか口に出せなかったのは余談である。
は懐からある物を取り出して、何か呪文のようなものを唱えた。
そして一瞬、強く光ったかと思うと、そこには長い金髪の女性が現れた。
「―、ちゃん?」
いや、現れたという表現には些か語弊がある。
何故なら彼女は『はじめからそこにいた』のだから。
「この姿で会うのは2度目、かな?石田君は初めましてだね。」
「あ…あんたはあのときの!?」
「さん!!?」
「どうなってるんだ…!?」
「さんは一体……!!?」
混乱の表情を浮かべる彼らにこと、現在と呼ばれる彼女は苦笑を漏らした。
「姉ちゃん!この女誰だよ!?」
……とまぁ、少々別の声も聞こえるが、それはさておき。
「黙っての説明を聞きやがれ……!!」
その空鶴の鬼気迫る言葉に、一同は口を噤むしかなかった。
「……あははっ、今ちゃんと話すからね?
私は紛れも無く『』本人だよ。
この姿のときに呼ばれていた名前が『』っていうんだ。
ちゃんと数年後にはこんな感じに成長するから、疑わないでね?
基本的に、名前が違うだけで中身は一緒なんだ。
名称は各自好きに呼んでくれて構わないから。まずここまでで質問はある?」
と、織姫が控え目におずおずと手を上げた。
「はい、織姫!」
「……えっと、ちゃん?」
「うん?」
「あの、その、ちゃんの髪は銀色……だよね?」
―そういえば、と石田やチャドも改めてを見た。
「あ、そっか。織姫たちは知らなかったっけ?地毛は金なんだ。」
確認するように幼馴染みである一護に視線を送ると、無言の頷きが返ってきた。
「ちょっと思うところがあってね、染めてたんだ。」
少々不機嫌そうな一護とは対照的に、の顔には笑みが浮かんでいた。
「他に質問は?」
「……いつからだよ」
「うん?」
「一体いつからお前は、死神だったっていうんだよ……」
その声は呻くように、一護から絞り出された。
「……最初から、だよ。
一護に会うより前、真咲さんに拾われるよりも前、もっと言えば16年よりも前、
つまりはこの現世に生を受けるよりも前、からだよ。
―そう、私は例えていうならの前世のようなものかな。
ただし転生という輪廻から逸脱し、記憶も、身体的要素も、そのままに。
全く同じに生まれた同一の存在。」
「っ……!!」
「そんなことって…」
「その証拠に、空鶴は私を知っているけど、その弟の岩鷲は私のことを知らないでしょう?
として付き合いがあったのは軽く50年以上前だし、覚えていなくても仕方が無い。」
と、そこで空鶴が溜息をついた。
「……最後に会ったのが50年前だろうが。頻繁に会ってたのはもっと前だぜ。」
その言葉に、という存在を認知したばかりの5名は絶句した。
「…そ、そうだったっけ?」
「っテメェ……!」
「あははははっ……」
笑って誤魔化すに、周りはもう、驚きを通り越して呆れるしかない。
と、そこで先ほどまで一人険しい表情をしていた一護が、一際大きく息を吐いた。
「―…そうだよな、お前はそういう奴だったよな、……」
一護が珍しいくらい表情を崩した。
「……7年前のお前、知ってるからさ。
なんか、うまく言えねぇーけど……――わかった。」
その言葉に一瞬、の瞳が揺れた。
「まさか、精神年齢六十過ぎてるとは、思わなかったけどな。
ずっと感じてた違和感みたいなやつ?…その正体が、わかった気がする。」
「……一護」
「欲を言えば、もっと早く教えて欲しかったって言いたいとこだけど……
お前にも事情があるわけだし、一応こうして話してくれたしな。サンキュー」
―そう、騙されたわけじゃない。
ただ、知らなかっただけなんだ。
自分のことで手一杯で、これじゃぁルキアのときと変わらねぇ。
「……ありがとう」
ポツリ、とは俯きながら言った。
―裏切られた、と思うのは、お門違いで、一瞬でもそう思った俺は、本当に馬鹿だ。
「…これでも一応、幼馴染みだからな。」
―お前の記憶してる人生の年数からいけば、ほんのわずかな期間だろうけど…
「ううん、間違いなく幼馴染みだよ。」
―過ごした年数は、掛け替えのない大切な時間だったから。
―本音を言えば、の口から正体を開かされたとき、
思いっきり罵ってやりたいくらい気持ちはグチャグチャだった。
なんでヘラヘラ笑ってんだよ、とか。
にとって俺は、家族は、なんだったんだ、とか。
……けどさ。
俺が聞いたことに答えるあいつさ、他の奴からしたら冷た過ぎるくらい
はっきりと答えただろ?
そのときもう一度、今度は一挙一動見逃すものかってくらいもう一度、
笑顔を浮かべて話すあいつをさ、しっかり見たときわかっちまったんだ。
―あぁ、こいつ無理してやがる、って。
―はじめて会ったときと変わってねぇじゃねぇか、って。
昔から、俺以上に不器用で、臆病で、
自分を犠牲にしてでも大切なモノを守ろうとするんだ。
―俺が傷つくとても思ったか?
……いや、確かにグサッときたし、ヘコんだけど…まぁ、それは置いといて。
そう気づいたらさ。
さっきまで苛々してた自分とか、全部馬鹿らしくなって
なんか情けねェくらい笑っちまった。
―こんなことくらいで嫌いになるわけねぇだろ?バーカ!
―俺ら『家族』だろ、!
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