ACT19:ともだち
―さて、どうしようか。
は満面の笑みを浮かべつつ、3人の様子を観察していた。
「ご飯!?わ、私の食べる?」
「いや、井上さん!突っ込むところはそこじゃないだろう!?」
「むぅ……どういうことだ?」
上から織姫・石田・チャドの順。
の登場にとりあえず驚いてくれたようだった。
「さすが織姫!ナイスボケ!!」
予想を裏切らない織姫の反応に、はケラケラと笑った。
「さん!君、狙ってやって……」
「金彦ー銀彦ー!ご飯は?」
「こちらにございます。」
「わぁやったー!」
シュタッと素早く床に座り、運ばれてきた膳に目を輝かせる。
そして石田に指摘させる間も与えず、ご飯を頬張りはじめた。
「うまっ!二人とも料理の腕上がった?」
一旦飲み込み二人を見上げた。
『お褒め頂き有り難く存じます』
二人がぺこりと頭を下げた。
「我々は一度、主の元に戻ります故。」
「殿はどうぞごゆるりと。」
「あっ!わざわざありがとう。」
『では』と退出する二人に手を振り、は食事を再開しようとした。
が、そこで石田が急いでストップをかけた。
「ちょっ、まっ、待ってくれさん!」
あまりにも必死な表情に、も食べようとする箸の手を止めた。
それとなく、チラリと織姫とチャドの方に目を向けてみれば、
その表情はやはり困惑している。
―そりゃあ、一般人だと思っていた友達が、こんな場所に現れれば……ねぇ?
このルキアの一件に関して、全く関係あるような素振りを見せなかったのだから仕方が無い。
(…というより、終業式をすっぽかしたんだから気付かないのも当たり前)
石田の場合は、が死神であることを知っていた分、まだ余裕があるようだ。
―というよりも。
石田の動揺は、先ほどに無視されたことによる所が大きい。
「あー……説明、いる?」
―しないで終わらせようとする方がおかしいだろう。
のその言葉に、3人は首をコクコクと縦に振った。
「―それじゃぁ、まず…パッと見『死神だ』ってことはわかるよね?」
自分の死覇装を指差して言った。
「黒崎くんと同じ、死神……」
ポツリと織姫が答えを返す。
「……そう。ただし一護が死神になるもっと前からそう、だったけど」
―いちおう、大先輩なんだよ?
と胸を張ってみた。
「なんで死神なのか。っていうのは、話せば長くなるんだけど…。
少なくとも『』としての死神歴は3年くらいかなぁ?」
「え……?」
「まぁ詳しいことは皆揃ってからね。
すっごく面倒臭い話だから何回も話すのメンドイし……とりあえずここまでで質問とかある?」
「―今回の朽木さんのことについて、君との関連性は?」
石田がすかさず鋭いところを突いて来た。
「話がだいぶ跳んだねぇ……『強制送還』との関連性、ね。
正直……そのうち迎えが来るだろう、とは予想してたよ。
死神の力の譲渡は決して褒められたことではないしね。
……ただ、隊長格が直々に出てくるとは予想外だったよ。」
―本当に。
副隊長まで引き連れてきてさぁ…。
普通、ありえないから。
と深いため息をつく。
「結論から言って、ルキアがこちらに連れ戻されたことに関しては、全く関与していない。」
両手を上げて無実を主張してみた。
と、先ほどから黙っていたチャドが戸惑うように口を開いた。
「一護はこのことを……」
―脳裏を過ぎったのは、夕焼け色のツンツン頭。
不機嫌そうにいつも眉間に皺を寄せている彼の顔。
そのあまりにもチャドらしい質問に、は自然と苦笑する。
「知らないよ。もちろん朽木さんも。ただ、喜助と夜一さんは知ってる。
ついでに言えば、ここの主の空鶴も。」
―別に騙していたわけじゃないんだよ?隠してはいたけど…と曖昧に笑った。
「そうだね、一護にはこれからちゃんと話すよ。」
―ご飯食べてから、ね?
それは少々冗談のようにも聞こえるが、声と目は確かに真剣だった。
「ちゃん……」
織姫が不安そうに視線を投げ掛けてくる。
と、石田が張り詰めた声でを呼んだ。
「―さん」
「……何?」
の表情からフッと笑みが消えた。
それは石田の纏う雰囲気が張り詰めていたのが原因だが、
その先に紡がれるであろう台詞を予想できたせいもある。
「―君は、僕たちの『敵』か?」
それは彼の、いや彼らの本心から出た問い、だったと思う。
「……石田君はどうだと思う?」
まるで彼を試すように、不敵にほほ笑んだ。
―それは織姫たちの知らない顔。
普段のからは考えられないほど不敵で、妖艶な笑みだった。
「……僕には、現段階での判断材料、特に君に関する情報が少な過ぎる。
正直なところ、味方だと言われても信用しかねるよ。」
「っ石田君!!」
「石田……!」
二人が声を上げるが、は至って気にしていない。
むしろ当然だ、という顔をして頷いていた。
「ごもっともです。まぁそれが当たり前だし。
『疑わしきは罰せず』じゃないけど『怪しきも信じず』ってね。
まぁこれは勝手に作った格言だけど。こっちが事情を話してないんだから仕方がないかな。
あえて明かすとすれば……」
の口がゆっくりと動いた。
「護廷十三隊所属、四番隊・第十四救護班隊員」
「…え?」
「それが死神『』の肩書き」
『!!!』
驚き動揺する織姫やチャドとは違い、石田の目は鋭く細められた。
「まぁ、そういう反応は予想してたけどさ……」
は少々困ったように頬を掻いた。
「基本的に四番隊は救護中心の隊なんだ。
だから諸々の戦闘行為……―例えば虚の魂送とかも。
その任務にあたる機会さえほとんどない。
護廷十三隊の死神の中でも最弱……どっちかって言うと非戦闘員に数えられる隊なんだ。
えーっと…結局何が言いたいのかと言うと…とりあえずは、さ。
それを念頭に置いておいて考えて欲しい、ってことかな。」
―うまく説明できなくてごめんね。
とは申し訳無さそうに笑った。
「―……ちゃん」
織姫が真っ直ぐにの目を見つめた。
「……あの、私の勝手な解釈なんだけど」
少し迷ったように口籠るが、がさり気なく促す。
「さっきのはその、つまり、私たちとちゃんが直接戦うことはない、
って受け取っていいんだよね?」
その言葉に、はゆっくりと頷いた。
「100%ではないけど、織姫たちがルキアを助けようとする限り、それは決して無い。
それだけは約束する。」
―断言させてもらうよ。
と織姫を安心させるようにほほ笑んだ。
「よかったぁ……」
「……それで十分だな。」
織姫がホッとしたのに続き、チャドも静かに呟いた。
「二人ともそんな簡単に……!」
一人険しい表情のまま石田は声を上げるが、それを余所に二人はすでに安心しきっている。
「あのね、石田君。ちゃんは『約束』を破ったりしないんだよ。」
「―……っ井上さん!」
「あぁ、は嘘はつくが『約束』は破らない。……一護もそう言っていた。」
こと一護に関しては、チャドも絶対の信頼を寄せているため即座に同意する。
「茶渡君まで……」
石田は一人、ガクリと肩を落とした。
「あはは、こんなにあっさり信じて貰えると、逆に今まで黙ってた罪悪感が……」
も少々照れたように頬を掻いた。
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