―気付くとそこは真っ暗で…探し求めているのは光だった…。
誰かが名を呼ぶけれど、私はその人物を知らない。
…いや、違う。今までに歩んできた人生・『自分』という存在、
それさえも何一つ信じられない。
『確かな存在意義と確証』
それは未だ得られずにいる。
Act2:静かなる呼応
学校から帰るとはベットに倒れこんだ。
特に疲れているわけではなかったが、
急な眠気に襲われ横になるとすぐ眠りについた。
……実を言うと今日遅刻したのもそこに原因があった。
―『夢』…そう自分を誰かが呼ぶ夢。
ありきたりすぎて、はじめはテレビか何かの見過ぎかと思っていた。
……けれど、すでにここ一年この夢を見続けている。
そして先月あたりから、一週間に1・2回だったものが4・5回に。
今週に入ってからは毎日のようにその夢を見ている。
―まさか自分がこんな体験をするなんて思ってもみなかったことだ。
大抵こういう類いのものは本人の精神状態の影響なのだから…。
自分には縁遠いものだと思っていた。
それが最近になってからは更にはっきりとしてくるのだから気味が悪い。
それに対しは嫌な気がしてならなかった。
―『―…さん―……ど…して………』
―『ごめ…なさ……』
『―こう…しか……なかった…。わたしは……しま…た…から…。
…あの子を…ま…こむ……には…いかな…。』
―『…わかり…た。…では…あな…の……は……させて………ます。
―ときがきたら………―あたしが……あ…たの…まえへ…あら…れ…ます…』
―『…死なないで下さいね………さん。』
その言葉とともには一気に覚醒した。
息が上がっているのはその影響らしい…。
だいぶうなされ、寝汗をかいていたらしく、
ベタベタとした重たい体をゆっくり起こすと服を着替えた。
変な時間から寝始めたせいか、現在は真夜中。
しかし頭は異様なほどハッキリしており、寝直すことはできそうにない。
…することもなくベットに転がり天井をぼんやりと見つめていた。
自分が自分ではないような感覚が付き纏い、
何も考えないようにしても夢の言葉がよみがえる。
どうしたものかと、深い溜め息をつく…と次の瞬間
ズドン!!という大きな衝撃音が聞こえた。
―しかし地震ではない。
の家はまったく揺れていないのだから…。
ということは近所の家のどこかに何かあったとしか考えられない。
急いでベランダへと続くガラス戸に駆け寄り外を見渡せば、
斜め向かいにある一護の家…そう黒崎家(クロサキ医院)の家の壁に
大きな穴が開いていた。
まるで『大砲で穴を開けた』かのように
ぽっかりと開いたそれはもちろん、外から内側に向けて壊されている。
普通ではないその状況には夢の続きかと思ったほどだ。
―何かがおかしい……。
は直感的にそう思った。
あれだけ凄い音が鳴ったにも関わらず、
以外誰一人として窓から顔を出さないのだ。
外に飛び出す人ももちろんいない。
いくら爆睡していても限度というものがある。
…と、視線をずらした先、が目を疑うような光景が目に飛び込んできた。
「遊子…!?」
―空中に浮かんでいる……?
いや、違う。
目を擦り、改めてそこを凝視すれば…骸骨のような面を被り、
禍々しいほどの殺気を放った人の形ではない化け物がそこにいた。
―あれは一体……!?
今まで『』として生きてきた人生の中で、
見たことも聞いたこともないソレに対し、
は急に体に電気が走るような…そう、
まるで体の奥底から何かを知らせるような感じがした。
―…今にもソレの前に飛び出して行きそうなほどの高揚感が
無意識のうちに胸の中にあったのだ。
―なぜ……?
自分自身でさえもわからない感覚に、は困惑した。
―…これはやはり夢ではないのだろうか?と。
不安・恐怖・好奇心・焦り・疑問…様々な思いが交錯する中、
今一番、自分が何をすべきなのかを考えた。
そう、今この時、自分のことにかまけている暇などないのだ。
―…まずは遊子を助けないと…!
即座にそう判断しその場から離れようとするが、
それより早く家の中から一護が出てきた。
片手に金属バットを持っているが、
あの『化け物』相手ではまったく歯が立たない。
防御の役目をほんの少ししただけであって、
標的が一護自身になるという最悪の事態となってまっただけであった。
「…っあのバカ!!」
がそう言うのとほぼ同時くらいに、全身黒ずくめで袴をはき、
今時ではありえない…腰に刀を差した(銃刀法違反)小柄な人物が現れた。
そして素早く刀を抜刀すると、
『化け物』の遊子を捕まえている片腕を切り落とした。
それにより無事遊子が助け出され、見ているも安堵の息をもらした。
ただ…先程の黒装束の人物は、単純に“一護の知り合い”
というわけではなさそうだ。
そのただならない雰囲気は、が一旦離れかけた
ベランダの戸際からでも十分に伝わってくる。
どうやら一護がその人物と何か話しをしているようだ。
会話は聞こえないものの一護が非常に焦っていることは見てとれた。
―……危ない!!
『化け物』が黒装束の人物に攻撃を仕掛け、
その人物を民家の塀まで吹っ飛ばした。
死んではいないようだがダメージが大きいらしい。
そこから立ち上がる様子はない。
そのことに一護がキレた。『化け物』の前に立ちはだかり、何かを叫んでいる。
「……一護!!ダメ!」
『化け物』が一護にも襲いかかって来た。
―ダメだ……!
そう思った瞬間、の頭の中に何かが走り抜けた。
先程よりも強く、意識は一瞬放心状態になる。
しかしなんとか踏み止どまり、外を凝視した。
すると一護に怪我はなく、かわりに黒装束の人物が重傷を負っていた。
一瞬……全身血塗れのその人物に、誰かがダブって見えた。
が、そんなモノを見たことあるはずがないと、
は小さく首を振る。
すると、また何かが反応し、今度は声が聞こえてきた。
「誰……?」
ソレは夢にも出てきたコトバ。
『ワタシガアナタヲマモルカラ』
……いつ見た夢に出てきたのかはわからない。
けれどこれは私が約束した言葉。
私の一番大切な人とした約束……。
『ワガナヲヨベ』
―……誰?
『ズットマッテイタ』
―わからない
『トキハウゴキハジメタ』
―……?
『ウゴキダシタハグルマハ、コワレルマデトマラナイ。マタアオウゾ…―……』
その言葉と共にの意識は急速に遠のいた。
しかしその夢の中で、一護があの黒装束の人物と同じ格好をし、
大きな刀を片手にあの化け物を倒すのを見た。
そしてその後に気絶した一護達の近くに現れた人影がいたのも……。
そこで意識は途切れ、記憶も曖昧となっていた。
ただ一つ言えることは、が見た夢は限りなく
現実に近いモノであったということだ。
本人がそれを知るすべは今はまだなく、
後にその真実を知ることになるが、それはまだ先の話しである。
―夜はまだ明けない。
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