ACT17:はじまりの警報







―ルキアと再会した翌日



は3日間の休暇を(半ば強引に)もらい、のんびりとしていた。

と言ってもそれは建前で、この期間は一護たちが来たときのための下準備期間だ。



この休暇を使って『志波空鶴』を捜す予定でいるのだった。



午前中に準備を終え、午後に出発しようと死覇装から着流しのような私服に着替え、

ちょうど部屋を後にしようとしていたところだった。



「『西方郛外区に歪面反応!三号から八号域に警戒令!!繰り返す……西方郛外区に―』」


「―――!?」



突然の警報だった。



「西方、郛外区……」



ちょうど今、自分が空鶴を捜しに向かおうとしていた方角。



「一護……?いや、まさか」



―何がなんでも早すぎる。予定より一週間も早いなんて……



「―予定外もいいところだって!

 そんな緊急事態の想定なんてことこっちは一切考えてないっていうのに……

 一体どうなってるんだよ!」



―正直、頭が痛かった。



だからと言って、このタイミングで違う別の誰かとは考え難い。



―疑わしきは己が眼で確かめよ。



は止めていた足をできるかぎり急いで動かし、その場へと向かう。



「ともかく、行動しなければ話にならない!」



現在の西門には多分、この警報を聞き付けた死神たちが大勢集まっているはずだ。

ということはつまり、そこへ行くのは良策ではない。



―下手をすれば、自滅行為ともいえる。



が怪しまれる可能性は、低ければ低いに越したことはないのだから。



「北門か南門か……。斷蔵丸の方が話を付けやすそう、だね。」



そう判断すると、は思いっきり地面を蹴った。

飾り石が欠けた首飾りを着けて霊圧を外部から遮断し、瞬歩で移動する。

その移動速度は席官クラスでも、そう簡単に追うことのできぬ速さだ。



たとえ『』は平隊員であったとしても、『』は違う。



仮にも元隊長格だったのだから、当然と言えば当然の芸当なのだ。



『十番隊隊長 山本 



長い白金の髪を持つ武闘派女隊長として名を知らしめた、

現・一番隊隊長にして、総隊長である山本元柳斎の養女。



門に着くとまず、渋る斷蔵丸の説得にかかった。



なんとか説き伏せて、ようやく郛外区へ出ることができたのは、

旅禍侵入からだいぶ時間が経ってしまったころだった。



―思ったよりも時間をくっちゃったな……。



旅禍たちか無事であることを祈りつつ、急いで西流魂街へ向けて走り始めた。



―数は約4人ほど……どうやら彼らで間違いないようだ。



近付くにつれてそれは確かなものへと変わり、正確には5人であることがわかった。

あと数十メートルという所まで来ると、いきなり姿を現すわけにもいかないので、

そっと物陰に身を潜めて様子を伺った。



「……一護に織姫にチャド、それに石田君、夜一さんか。」



流魂街のとある家のお茶の間に5人はいた。

どういうわけかジ丹坊が負傷しており、それなのに5人は迎え入れられていた。



―怪我させたのは別の人物……?



街の人々はとても好意的だ。

そう、としか考えられない。



「じゃぁ一体誰が迎撃を……」



ジ丹坊は門番の中でも特に信頼されているし、その強さも御墨付だ。

まさか破られるとは、誰も思ってはいなかっただろう。



「一護たちの方に気を取られ過ぎたか……」



は小さく舌打ちをした。



「……とりあえず、このあとの行き先は空鶴の所とみて間違いないかな?」



こちらの予定はだいぶ狂ってしまったが、まぁそれは仕方がないと言えよう。



―瀞霊廷側からの追撃部隊は派遣されて無いみたいだし……



「ひとまず、迷惑かけた斷蔵丸に礼でも言いに行くかな?

 今度は入れてもらえるようにお願いしとかなきゃいけないし……」



とりあえず、彼らの所在がはっきりしていれば、こちらも対処のしようがある。



予定を変更……そして繰り上げしなければいけなくなったため、

これから忙しくなるのは確かだ。



すると、中から黒猫がふらりと出てきた。

そして何気なく散歩しているように見せかけて、ちらりとこちらに視線を送ってきた。



、わしじゃ……

―わかってます、夜一さん。



がコクリと頷くと、二人は一瞬にして人気のないところへと移動した。



「……さて、まずはこちらの報告が先じゃな。」



夜一が飄々と話を切り出した。



「はい、お願いします。というより話しなさい。

 予定より一週間も早いなんて、予定外にも限度がありますよ?」


「お主、の口調に戻りおったな。

 ふむ……一週間か、それはまた幸か不幸か。

 断界で『拘突』に遭遇してしまっての、乱雑に抜けたのが原因じゃ」


「『掃除屋』ですか……よく、全員生きてましたね。」



はその発言に目を瞬かせて驚いた。



「……危うかったがの。」



夜一がそのときのことを思いだしながら、半ば溜め息混じりに言う。



「原因はわかりました。

 仕方がありませんから、こっちは多少無理をしてでもどうにかしますよ。

 ……ところで、ジ丹坊は……」



―怪我の具合も気になるが……



「市丸ギンじゃよ」



の目が一瞬にして鋭く細められた。



「市丸?何故こんなところに……」


「さてな。偶然か、はたまた……―」



「今はとりあえず、そのことについていいでしょう。この後、どうするんです?」



疲れたようにはしゃがみ込んだ。



「空鶴を訪ねるしかなかろう。」



予想通りの返答に、はバツが悪そうに頬を掻いた。



「すみません、実を言うとまだ情報掴んでないんですよ。

 今日行くつもりだったので……」



申し訳なさそうに息を吐いた。



「うむ、そのことなら安心せい。儂も都合よくお主に会えるとは思うとらんかったしな。

 先ほど情報を得て、すでに目星は付いておる。」



その言葉に―まいったなぁ……とは笑う。



「流石……ですね、夜一さん。全く頭が上がりません。」


「たまたまじゃ。まぁそういうことで、明日ここを発つ。…お主はどうする?」



夜一が、しゃがみ込んでいるを除きこむように見る。



「そうですねぇ……一旦、迷惑をかけた斷蔵丸にお礼をしに行きます。

 それから少し用を足して……その後そっちに。」



つまり、空鶴のところで落ち合う手筈となる。



「そうじゃな、空鶴には儂から話を通しておこう。」


「ありがとう夜一さん。」


ヒョイと夜一に手をのばすと、目の合う高さまで持ち上げた。



「三連休に感謝かな?じゃぁ……また。」



コツン、と一瞬額を合わせ、夜一を降ろすとゆっくり立ち上がった。






―幕は上がった。



―前例のない戦いが、もうすぐ始まる。



―『その時』は間近。







夜風が静かに木々を揺らす。











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