ACT16:囚われたココロ






―尸魂界



がこちらに帰ってきてから、もう少しで2週間が経とうとしていた。



約束の期限まではあと少し。

周りに感付かれないよう最深の注意を払いながら、一人着々と準備を進めていた。



―また現世に行くとき、どうしようかなぁ……。



こっそり抜け出すことは可能であるが、

丸1日以上戻らないともなると職務怠慢で怪しまれてしまう。



理由などいくらでも思い付くのだが、どれが適切かは迷う所である。



「現世に大事な忘れ物しました〜ってね。」



こんなことを言えば……



―それは一体なんだ。



とツッコミをされることは間違い無いだろう。

まぁ、あながち間違いではないが。



しかしそれは物ではなく、者であることを追記しておく。



無事に復帰したの仕事は、主にデスクワーク中心となっていた。



その原因はもちろん先の不祥事にあるのだが、

2・3日前からようやく上司の花太郎に付いて治療などの補佐にあたれるようになった。




























―そして今日



休みの花太郎に代わってとある場所を訪れることが決まっていた。

にとっては、楽しみ……といえば楽しみなことであり、思ってもいなかった偶然に感謝した。



その場所とは―

『六番隊罪人牢』そこに収容されている人々の世話がの仕事である。



と言っても大した人数が居るわけでもなく、

が主に看るのは『朽木ルキア』養子とはいえ四大貴族に名を連ねる朽木家の者。



牢に入ってはいても、その待遇は多少なりとも考えなければいけないようだ。



「『瓢箪から駒』とでもいうのかなぁ……?」



会ったときの反応を期待しつつ、鼻歌交じりにそこへ向かった。



「四番隊 十四上級救護班所属、 、山田七席の代理で来ました。」



入口でそう挨拶すると、六番隊隊員であろう青年が顔を出した。



「あ、はい。話は聞いています!どうぞあとはよろしくお願いしますね!」



そう言うと青年は足早に扉から出ていってしまった。



「……不用心だなぁ」



―本人かどうかくらい確認しようよ。



は小さく溜め息をついた。



「まぁ好都合だけどネ」



足取りも軽く目的の場所までやってくると、さっそく声を掛けた。



「ルーキーアーっ!元気にしてる?」



学校登校時の挨拶と同じくらい気軽に、そして陽気に話しかけた。



「!?……なっ貴様誰だ!!」



驚いたように声を上げたルキアは、どうやらだと気付いていないらしい。



「えっ!ヒドッ!!もう忘れちゃった!?

 あーっと……頭と目の色違うから!?

 一護の幼馴染みでクラスメイトの でーす!」



―やぁ、久しぶり!



と手を振るではあったが、本気で忘れられてたらどうしよう、と内心では微妙に必死だった。



「なっ……だと!?」

「そう!覚えててくれたんだね。よかったぁ……あ、ちなみに頭と目はズラとカラコンだよー」



―似合う?と髪をつまむ仕草をする。



しかしルキアは目を見開き硬直していた。



「……っ何故貴様が此所に居る!?」



椅子から勢いよく立ち上がりを見据えた。

そんなルキアの様子にはこっそり苦笑した。



「うん、ぶっちゃけ死神だったり。

 詳しい事情はあんまり話せないんだけど…これだけは信じて欲しい。

 ルキアが死神の力を譲渡した事実の露呈……。

 これに私は断じて関わってはいない。」



は真っ直ぐにルキアを見据えた。



「……あぁ、それに関しては疑ってなどいない。

 技術開発局の現世影像の網に引っ掛かったのだと恋次から聞いた。

 そうか、死神…だったのか。」



ルキアはぽつりと呟いた。



「技術開発局……か。

 私は、ルキアのすぐ後にこちらへ帰って来たんだ。

 不祥事の決裁が済んでね、少し前に復帰したんだ。で、今日は山田七席の代理で。」



その言葉にルキアはパッと顔を上げた。



「……っ!やはり例の不祥事を起こした平隊員のとは……」


「あぁ、私だよ。現世ではじめて会ったとき、同姓同名でビックリしたんでしょ?

 実際、こっちでのちゃんとした面識はなかったからねぇ……」



クスクスと笑いながら、はようやく牢の鍵を開けて中に入った。



「……なんか珍獣になった気分。」



自分が入ってきた方向を振り返りつつ、改めてルキアの元に歩みを進める。



「……少し痩せた?」

「……かもしれぬな。」



がルキアの頭をそっと撫でた。

現在、自分が被っているウィッグとは違うサラサラとした感触が、直に手のひらに伝わってくる。



「何もして上げられなくてごめんね……」



―中央四十六室の下した判決は極刑。



それが覆った前例は決してない。



―確実に助けて上げられる保証なんてどこにもない。



のせいではない。気にするな。」



そんな、自分を気遣って穏やかにほほ笑むルキアの姿は、

やはり薄幸で……はやるせなかった。



「ねぇ、ルキア……」

「なんだ?」

「ルキアにとって一護たちと過ごした日々は楽しかった?」



過ごした時間はほんのわずか。



―それでも一護やルキアにとっては……



「―悪くはなかった。」



今のルキアにはそう言うのが精一杯だったのかもしれない。



「そっか、ならよかった……待っててルキア。」



安易に、ルキアの心を乱すようなことだけはしたくなかった。



けれど……



『必ず助ける』と今、覚悟は決まった。



、一体何を……?」



その声を遮るように突然、牢の入口から大きな声が響き渡った。



「入るぜ!」


『………』



少しするとルキアの牢の前に赤い髪の青年が立ちはだかった。



―『阿散井恋次』



六番隊副隊長か。



「よぉ、ルキア!って……誰だお前ぇ?」



開いている牢の扉から勝手に入ってくると、をジロジロと見た。



「……お初にお目に掛かります阿散井副隊長。

 私は四番隊十四上級救護班所属、と申します。

 この度は、山田七席の代理で参った次第です。」



そう言って深々と頭を下げた。



「あぁ、わかった。仕事は大体済んだのか?」

「はい。私はこれにて失礼させていただきます。」



もう一度頭を下げて、は二人に背を向けた。



「……っ!」

「またね、ルキア」



笑って手を振り、ルキアの追及の目を退けた。
























―約束の日までもう少し……



今日で10日、約束の日はあと一週間後。

現在はちょうど喜助の修業が終わっている頃だろう。



それから穿界門が完成する予定日までの約一週間、その後が現世へ行く手筈になっている。



しかし……



―果たして予定通りに事が進んでいるか。不安が残る。



決して一護や喜助を信じていないわけではないが、事が事だけに、

どうしても慎重になってしまうらしい。



―いざとなれば一人でも決行する。



そのつもりではいるし、覚悟もある。



―ただ、心残りなのは……







もう二度と会うことは無くなるだろう。







『大切な彼らへの思い―』















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