ACT13:笑えないピエロ
廃ビルの一室に織姫とチャドの二人を残し、は屋上にいた。
今、あの二人には考える時間が必要だと悟り、はあえてここへ来ていた。
「決断する時間は…今しかない…」
―そう、どちらに転ぶにしろ行き着く先はきっと一緒なのだ。
「……残酷、なのかな?」
―突き付けられた現実は、あまりにも惨い。
「でも、あの二人は……」
一緒に過ごしてきた日々が頭を過ぎる。
の知る限り、二人は他人に対しても優しかった。
「それが、大切な友達なら尚更かな……?」
―ずっと逃げ続けてきた自分には、眩しすぎる存在。
「女々しいな……」
そこで一旦言葉を切った。
そして顔を上げたの視線の先には、メノスに立ち向かう一護の姿があった。
強大な霊圧が辺りを包み込み、はピリピリとしたその空気を感じ取る。
「本当に末恐ろしいよ。」
そして一護はメノスを斬魄刀で両断した。
そのただの死神には成し得ないはずの事実に、はとある小さな確信を持つ。
トドメまでは刺せなかったものの、今回はそれだけで十分だった。
斬られたメノスは、空の割れ目からゆっくりと帰って行く。
その様子をしばらく静観しつつ、は懐から首飾りを取り出した。
「喜助、私も一歩踏み出すことにするよ…」
その首飾りに付いている13個の石の一つを取り外し、小さく何かを呟く。
「……私が今、キミ達にしてあげられることはこれくらいしかないから。」
その石を霊圧の放出により倒れている一護と、必死に弓を射続ける石田の頭上へと放り投げた。
「…『人場を御せ』」
その言葉に石が弾け一護の霊圧の放出が一定に止まった。
それに小さく安堵の息をもらすと、石の一つ欠けた首飾りをまた懐に戻す。
「お疲れ様。」
はゆっくりと踵を返し、静かにその場を離れた。
―その先に待つモノは、定めだったのだろうか……?
―翌日の学校
授業中、両腕を包帯でグルグル巻きにした石田が登校して来た。
「―石田!?どうしたのその怪我!?」
授業をしていた担任の越智さんが驚いて石田を見た。
「階段から落ちました。」
―『べ、ベタ……』
その瞬間、にはみんなの心の声が聞こえた気がした。
―思ってたより酷かったみたいだね。
その傷を痛ましげに見ると、小さく溜め息をついた。
ふと、一護を振り返れば、かなり気にしている顔をしている。
―まぁ、わからなくもないけど……。
半分以上は自分の責任で負った傷だ。
仕方がない、と言えばそれでおわりだ。
―それでも一護はかなりのお節介焼きだからなぁ……。
そこは、二人の妹を持つ長男の気質がそうさせるのかもしれない。
―……多分出る幕はなし、かな?
勝手に自己完結をすると、は机に突っ伏した。
そして、窓から差し込む陽気に誘われ、それから数分も経たないうち
あっという間に夢の中へと飲み込まれて行った。
「み……三つ編み!?」
が次に目を覚ましたのは、丁度昼休みが始まった頃だった。
恐ろしいことに、知り合い全員が三つ編みというなんとも言いがたい夢だった。
―……テッサイだけは何時も通りだったが。
たつきがを起こそうと近寄って来た所に突然飛び起き叫んだため、
たつきに思いっきり殴られた。
「心臓に悪いわ!」
「……痛い。」
後頭部を擦りつつ振り返れば、織姫や千鶴たちがすでにお弁当を持って待っていた。
「……あ!もうお昼!?今すぐ準備する!」
わたわたと立上がり鞄を漁ると、目的のお弁当を見つけ、
それを片手にみんなの元へと駆けて行く。
「お待たせ!」
「よし!じゃぁ今日は天気いいから外行くよ。」
たつきが先に教室を出ようとすると、はあることを思い付いた。
「……あ、ちょっと待って。ついでと言ってはなんだけど、ルキアも誘っていい?」
その言葉に周りは少々驚いたようだった。
「『ルキア』って朽木さん?」
「珍しいね、。」
「仲良かったの?」
「教室にはいないみたいだね。」
4人が思い思いにしゃべりを見た。
「ぶら霊のときに仲よくなったんだー。
警備員に追っかけられてたのをさり気なく助けた。」
―なるほど。と皆納得したようだった。
「どこ行ったかわかる?」
「多分外にいると思う!」
「じゃぁとりあえず、外行こうか!」
ぞろぞろと教室を後にし、一同は外に出た。
「んーっめっちゃイイ天気!」
先ほどまで寝ていたとは思えないほどテンションが高いに、たつきが呆れた。
銀の髪が太陽の光に当てられて、キラキラと輝きを増す。
元が金髪なだけにそれはとても綺麗に染まっていて、によく似合っていた。
「ちゃんの髪、綺麗だよね……」
織姫がふと呟いた。
その言葉には少々驚いたように目を瞬かせるが、嬉しそうにふわりと笑った。
「ありがとう。自分でも気に入ってるんだ!
でも、織姫の髪も綺麗で好きだよ。すごく、暖かい色だよね。」
「あ、ありがとう!」
逆に織姫が照れてしまい、ほのぼのとした雰囲気が二人を包んだ。
「おーい、二人とも早く帰っておいでー」
たつきが困ったように頭を掻いた。
そこに千鶴が現れて……
「帰っておいでっていうか、いっそ私混ぜてぇー!!そして一緒にイカせて……!!」
「死ねっ!」
千鶴の下ネタ発言にたつきがキレる。
ギャァギャァと騒ぐ二人は当初の目的を忘れているに違いなかった。
「学習能力が無いっていうか……」
ポツリとが呟いた。
「あー!いたいたあんなところに!」
マハナが木の上に居たルキアを見つけ、二人の世界に入っていたと織姫や、
騒いでいたたつきと千鶴も戻って来た。
「ルキアー!一緒にご飯食べよっ!!」
両手をブンブンと振り回してアピールするにルキアは目をキョトンとさせていた。
「お弁当持って来てなくても大丈夫!余分に持ってきてるから心配ムヨー!」
用意周到な上、満面の笑みを浮かべるに逆らえるはずもなく、
強制的にルキアは一緒にご飯を食べることとなった。
木陰に腰を下ろし、各自がマイペースに箸を進める中、
はルキアに紙パックのジュースを渡すと、ガサゴソと袋の中を漁り始めた。
「チョコデニ……いやベーコンマヨ、メロンパンも捨てがたい。」
ブツブツと呟きながら漁る姿はどこかおかしい。
悩んだあげく、ルキアに助けを求めた。
「うーん、ルキアはどれが……」
「ねぇねぇ、朽木さんって黒崎のこと好きなの?」
「………」
の声を遮りマハナがズバリ問う。
「ボフッ!!はい?」
ルキアが勢いよくジュースを噴出し、隣りにいたの肩がビクリと跳ねた。
「ふおっ!?ルキア!?」
「ていうかぶっちゃけ今、黒崎とどういう関係?」
「ちょっとマハナ!そのきき方ストレートすぎるよ!」
みちるが焦ったように注意し、それを不思議に思ったもそこに加わる。
「……率直かつ完結でいいと思うけど。」
「そうそう!あんた達が気にしてるくせに訊けないでいるから、
あたしが代わりに訊いてんでしょ!」
「あ……あたしは別に気にしてなんかないもん!」
気弱なみちるにしては珍しく、はっきりと反論した。
「そりゃアンタはそうでしょうよ。」
「みちるは一護のことキライじゃん。」
千鶴とたつきの発言に、と織姫は目を丸くした。
「初耳」
「そうなの!?」
すると焦ったようにみちるは否定する。
「ち、違うよ!別にキライとかじゃないよ!?
ただちょっとカオがこわいなーとか思ってるだけで……」
なるほど。とは納得する。
―いっつも眉間にシワ寄せてるし……。
確かに人相は良くない。
幼い頃からの付き合いだからだろう。
全く気づかなかったなぁと頷いていると、いつの間にか千鶴がルキアの手を握り、叫んでいた。
「あたしはアンタを応援するわっ!!そしてヒメの純潔を我が手に!!!我が手に!!!!」
―ノーコメントでお願いします。
大体の話の流れが読めてしまったため、は一人苦笑した。
「で!?結局のトコどうなのよ?」
マハナがようやく本題に戻し、ルキアに問う。
「……黒崎くんは…… ただのお友達ですわ!」
―その表情が……
には酷く寂しいモノに見えてならなかった。
Back Menu Next