ACT10:静なる傍観者






日も暮れて、夜空には月が浮かんでいた。





―廃病院前



そこは異常なほど大勢の人がごった返していた。



仮にも廃病院前、好き好んで来る人は普通いないだろう。



しかしそれも『ぶらり霊場突撃の旅』

いわゆる『ぶら霊』の撮影場所・日時が今日ココであるのが原因であった。



実際夜なので、近所の人も迷惑だろう。

こういうイベントに際して、必ず突発的なバカをやらかす奴は絶対いる。

警察にとってもいい迷惑だ。



…そしてここにもう一人すでに迷惑を被った人物がいた。



「…テレビのバカ野郎」



そう呟いた人物こそ『』その人である。



「テレビに八つ当たりかよ。」



呆れた一護がすかさずツッコんだ。



「他人の迷惑を顧みないなんて、それで国民的テレビ番組とは嘆かわしいよねェ…」

「他人って超個人じゃねぇかオイ」



一護がまたさりげなくツッコミを入れる。



「…何か言ったかな一護君?」

「いいえ何もサン」



そんな会話をしながら、二人は現在廃病院前にいた。

その後方にはもちろん黒崎家のメンバーもいる。



ちゃん、やっぱり私が誘ったの嫌だった?」



遊子が今にも泣き出しそうな顔でを見上げた。



「そっそんなことないよ遊子!?」



慌てて否定するが、遊子のその目はまだ疑いの色を帯びている。



「本当に?嘘じゃない?」

「…ほっほら『ボハハハハッー!!』」



内心冷や汗をかきつつはそれをやってのけた。



「ボハハハハーッ!!」



遊子も嬉しそうにそれを返すとカリンの元へと走って行った。



「……良かったぁー…」



は安堵の息をもらし、一護はその様子を静かに見ていた。



「お前ホント遊子に弱いよなー」

「……そういう一護もデショ?」

「……まぁな」


「せっかく遊子が楽しみにしてるのに、気分打ち壊させたら可哀想だしね。」

「……だな」


「あ、ところで一護」



がゆっくりと後ろを指さした。



「啓吾やたつきたちと待ち合わせしてたの?」



その言葉を聞いた瞬間、一護の表情が先ほどまでののように嫌そうな顔になった。



「おっ!に一護!!」



啓吾と水色が嬉しそうに駆け寄って来た。

そして勢いよく一護を指さし……



「「来てんじゃん!!」」

「うるせえ!黙れ!殺すぞ!!」



―あー……こういうこと。



は一人納得した。



―多分、啓吾とかに誘われて断ったんだろう。



でも根本的に家族思いだから、来るのは容易に予想できる。



「あ、たつきーっ!」



織姫と一緒にやってきたところを掴まえた。



!やっぱあんたも来たんだ?」

「……遊子には勝てないよ」

「そんなことだろうと思った。あんたも一護も本当に家族に弱いよねぇ……」

「ごもっともデス」



たつきに肩をポンと叩かれ、は頭を垂れた。

と、いつの間にか少し離れたところで織姫と一護が二人で話をしていた。

その様子を眺めながら、は口を開いた。



「織姫って、本当に可愛いよね……」

「ソレなんか親父っぽいよ

「ヒドッ!いやさ、ああ言う行動を見てると恋する女の子っぽいなぁ、ってね?」



そう、いつもの天然ぶりとは少々違う雰囲気を醸し出している。



「……時々、あんたも実年齢より老けたような発言するよね」

「そう?」



は苦笑するしかなかった。



―鋭いなぁ……



たつきは、そういう人の微妙に雰囲気を察するのが上手かった。

一護しかり、織姫しかり、しかり。



と、向こうの話が終わったらしく、織姫がこちらへとやってきた。



「……んじゃぁまたね!」



たつきの肩を軽く叩くと、その場をゆっくりと離れた。



















人混みの中、はある人物を見つけそこへと歩んで行く。



「―やぁ石田君」



声をかけると、彼はゆっくりと振り返った。



「……さん僕に一体何の用だい?」



その物言いはどこかトゲトゲしかった。



「ん?特には。ただ一つ言っておこうと思ってさ!」

「何を…?」



ニコリと笑ったと、睨み付けるような鋭い顔つきをした石田の二人の表情は

実に対照的だった。



人気のない所に場所を移しは口を開いた。



「……君、滅却師だよね?」

「!!」



直球で言うに石田はさらに目を鋭くした。



「あ、他言はしないから安心して」

「……何を」



警戒する石田にはまた笑った。



「気付いてると思うけど……」

「君の『正体』か?」

「そう。一護たちには黙っててもらおうと思って」



その発言に石田は目を見開いた。



「……仲間じゃないのか?」

「いや全く。向こうは気付いてない」

「何故?」



その瞳は訝しげにを捕らえた。



「大切だから、かな。今はまだ知らなくていいことだしね。」



クスクスと笑うその姿は、普段教室で見掛けるからは想像できないほど妖艶だった。



「君は一体……?」

「ただの死神でないことは確かだよ。」



そう言い残し、はそこから立ち去った。





















「きーすーけーっ!」



人混みの中でも一際異色を放つ存在には声をかけた。



さんじゃないッスカ。奇遇ですね。」

「……可愛い妹に押し切られてね。」



フッ…とは意味有り気に笑った。



「……そうデスか。まぁ、アタシも大差はないですヨ。」

「ジン太とウルル?」



視線を下に向ければ、相変わらず態度のデカいジン太と、

どこか頼り無さ気なウルルがを見上げていた。



「二人とも相変わらず可愛いいねぇ」



二人の頭をポンポンと叩くと今度は喜助の隣りを見た。



「テッサイさんこんばんわ!」

「はい、殿も。」



テッサイと一通り挨拶をかし一呼吸置くと、はわずかに眉を寄せた。



「喜助……“コレ”どうにかならない?」

「……確かにうるさいッスねぇ」



の言う“コレ”とは地縛霊の声。

唸るような叫んでいるような、とにかく聞いていて気分の良いモノではない代物。



「……気付いてる人間も何人かいるみたいだけど?」

「大丈夫じゃないすかね?きっと黒崎サンがなんとかしてくれますって」


「……そうかな。」



そうこうしているうちに撮影が始まり、空から人が降ってきた。



『キャァァァァァァ!!!!』



みんな上を見上げて歓喜の声をあげている。



「あれが例の『ドン観音寺』」



納得したようにが手を打つ。



何かを言っているようだが、興味が無いので聞く気にもならなかった。



「どこ行くんスカ?さん」

「ちょっとそこまで。終わるまで適当にブラブラしてるよー」



背を向けてヒラヒラと手を振るとは、どこかへと歩いて行った。
























しばらくウロウロしていたものの、あっという間に暇になり、手頃な木の上へと上った。



「早く終わんないかなぁ…」



幹に寄り掛かりながら、は月を見上げた。



『ぎゃぁあぁぁあぁー!!!!』

「!?」



突如聞こえた叫び声に急いで撮影現場へと振り向けた。



「なっ!?あの男何やって…!!」



―地縛霊の『穴』をこじ開けてる!?



は木の上で表情を険しくした。



「随分と質の悪い霊能力者なことで……」



中途半端に誤った知識ほど厄介なモノもないだろう。



―助けるべきか…?は飛び下りる態勢をとった。



「あっちゃー……」



飛び出す前の不測の事態には額を押さえた。



―そう…一護が自分より短気で、すぐに手が出るのを忘れていたのだ。



―確かに一護がなんとかしてくれそうだけど、後先考えない性格をなんとかして欲しい。







警備員に取り押さえられている様子を見ながら、は小さく溜め息をついた。











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