第四話:偶然?来る!
リボーンの発言に頭を悩ませつつ、昼休み。
運悪く雲雀から呼び出され、憂鬱な面持ちで応接室までの道のりを歩いていた。
「今日は厄日ね…」
はそう言って深く溜め息をついた。
朝のことを振り返って、まぁリボーンと『会った』ところまでは許そう。
―ただそのあとの発言が大いに問題ありだ。
よりにもよって、にも手に負えない雲雀を、だ。
ファミリーに引っ張り込むなんて果たしてできるのだろうか?
それをやろうとしているリボーンの器に、まさに絶句である。
「あの恭弥が他人におとなしく従うなんて……私には全く想像もつかないわ…」
第一印象が大切。とはよく言ったものだ。
あれ以来(2話参照)どうやら雲雀に気に入られてしまったらしく、
事あるごとに、暇さえあればトンファーをチラつかせてくる始末だ。
まぁしかし、そんなことばかりもやっていられないらしく、
の顧問という立場を利用して、委員会の雑務を押し付けてくることもよくある。
―手伝ってみてわかったけど…。
風紀委員は不良の集まりと言うだけあり、デスクワークが苦手な者たちばかりらしい。
委員会の書類等は雲雀が一人で処理しているらしく、
その他のことに手をまわす余裕があまりない。
そこで丁度良い具合にが現れたものだから、
使えるモノは使うという彼の理論に従って現在に至った。
―悲しいかな、断れない自分がまた、ねぇ…?
やはり第一印象は大切だ。
と、一人納得してしまった。
雲雀の機嫌が悪くないことを祈りつつ、ゆっくり応接室の戸を開けた。
「お疲れーぇっ?……はいっ!!?」
一瞬、我が目を疑った。
『あの雲雀』が…
「―雲雀恭弥がスリッパで叩かれてるなんて」
そう、幻覚に違いない。
開けた戸を一度閉め、もう一度開く。
「……勘弁してよ。」
は額を押さえた。
そこにいるのは間違いなく知っている人物ばかり。
そりゃぁもう、狙ってましたと言わんばかりのメンバーだ。
真っ先に視界に入ったのはもちろん雲雀。
だが、それに対し臆することなく立ち向かっているツナこと沢田の存在。
―何でよりにもよってここに…!
その疑問をすぐに解決してくれたのは、窓際に立つ小さな影。
―りっリボーン…!!
言わずもがな。
仕組んだのはアイツだ。アイツしかいない。
今日の朝会って、昼に決行。
その行動力にはいつも驚かされるが…
―少しはこっちの事情も考えて欲しいものだわ。
ガクリと肩を落とす。
そもそも、が額を押さえた原因はもちろん、
このリボーンの思いもよらない行動のせいである。
床に転がる獄寺と山本をかなり気の毒に思いつつ、
チラリとリボーンの様子を伺う。
―完璧に面白がってるよ…。
の存在には当然気付いているが、今あえて接触はする気はないらしい。
…それよりも、フラフラとしながら沈黙を保っている雲雀が妙に怖い。
「…ねぇ…」
―悲しいかな。
条件反射でビクリとの肩が跳ね上がった。
「……殺してもいい?」
「ゲッ…!」
あんまり嬉しくは無いが予想がまた的中。
今までにないくらいに殺気立っている。
―だからと言ってここのまま生徒を見殺しにはできないし…。
軽くリボーンを睨んで牽制しつつ、
後ろに回している右手には、チョークが4本ほど握られている。
―恭弥が標的を私にしなきゃいいんだけど…。
その確率は決して低くはない。
今の状況的に、全員噛み殺しそうだ。
そう、これはあまりにも危険だが最終手段だ。
憂鬱ではあるが、このままにして置くわけにはいかないのだから。
は諦めて行動に移そうとしたその時…
「―そこまでだ。」
ほとんど期待していなかったリボーンによる、制止の声が掛かった。
「うっわー…珍しい…」
思わずポロリと口に出してしまった。
「やっぱつえーな、お前」
「…君が何者か知らないけど、僕、今イラついてるんだ。
横になって待っててくれる?」
―げっ…!!
―ガキィン!!と金属がぶつかり合う音が響く。
リボーンが片手で、しかも何故か十手で雲雀のトンファーを防いだのだ。
「ワォ、すばらしいね君」
雲雀が嬉しそうに笑う。その様子に…
―あぁ、リボーンも気に入られたな。と、
こっそり溜め息をつく。
「おひらきだぞ」
と、空いていた片手には、いつの間にやら爆弾が。
「…ちょっ!リボーン!?」
「、貸し一つだぞ」
「はぁっ…!?」
その直後、爆弾が盛大に爆発してくれた。
「ゴホッ…ゴホッ…!…っリボーン!」
に反論の隙も与えず、まんまと貸しだけ作っていった。
その手際の良さはさすがリボーン。
―あそこで止めに入った時点でおかしいとは思ってたけどね…。
やっぱりタダでは無かった。
過去、リボーンに貸しを作って、何度酷い目に遭ったことか…。
―恭弥に喧嘩を売られる方が、まだマシだったかもしれない。
と、思ってしまうほどに。
「勘弁してよ…」
リボーンたちが去り、ボロボロの応接室で途方にくれる。
しかし、それもほんの束の間のことだった。
「―ねぇ……」
その声にギクリ、と体が硬直した。
そして唐突に、この部屋の主の存在を思い出した。
「あの赤ん坊と知り合い?」
「……なんのことかしら?」
嫌な汗が背筋を伝う。
「へぇ…しらを切るつもりなんだ?」
雲雀が楽しそうに口の端を持ち上げた。
―ヤバイ……!!
「いやっ、そのね?ちょっとした顔見知り程度というか…」
―ジャキッ!というトンファーを構える、とても嫌な音がした。
「―まぁ、力づくで聞くまでだけどね。」
「ちょっ!それは恭弥が戦いたいだけでしょう!?」
のツッコミレベルが3上がった。
と、それはともかく。
雲雀が攻撃を仕掛けて来る前に、先ほど手にしていたチョークを急いで投げた。
微妙な時間差で3本投げ、予備で1本だけ所持。
雲雀がそれを防いでいる隙に後ろの扉から逃走した。
「ありえない…本当にありえない……!!」
廊下を早歩きで移動しつつ、先ほどまでのことを回想する。
結局自分はリボーンに貸しを作り、かつ、雲雀の相手までさせられそうになったのだ。
―恭弥に喧嘩売られる方がマシ、なんて考えるんじゃ無かったわ…。
正直これでは、自分の身がいくつあっても足りない。
―まさかこんな日が毎日続くなんてことは…
「考えないでおこう…」
そう、この後のことはあまり考えたくもない。
しかし放課後、この時逃走したことを死ぬほど後悔したのは言うまでも無い。
唯一救われたのは、雲雀の機嫌が良かったということだが…。
それはそれで、が絡まれることに変わりは無かったようだ。
Back Menu Next