第三話:命令来る!
突然だが、宛てに一通の手紙がきた。
『 親愛なる部下 渋谷 へ
久しぶりだな。元気にしているか?
突然だが、ボンゴレ9代目よりあることを頼まれた。
次期ボンゴレのボス……つまり、10代目のことだ。
どうやらその候補者は日本人で、君の勤める並盛中の生徒らしい。
いろいろとアドバイスや手助けをしてやって欲しいとのことだ。
よろしく頼む。
…そうそう、その候補者の名前だが「沢田綱吉」というそうだ。
あのアルコバレーノのリボーンが家庭教師をしていると言っていたから、
会ったらよろしく言っておいてくれ。
最後に、きっとそちらの方が忙しくなるだろう。
しばらくはこちらの仕事を入れないよう調整しておく。
私からは以上だ。 ― ボブ 』
「……ってちょっと待て」
は手元にある手紙に思わずツッコミを入れてしまった。
この手紙の送り主は、知る人ぞ知る地球魔族の第一責任者。
…通称ボブ。
「次期ボスって…はぁっ!?」
突然過ぎる内容にの頭は一時混乱に陥った。
そもそも、とボブの関係は手紙の始めにもあった通り、上司と部下のようなものだ。
厳密に言えば少々異なるのだが、役割としてはボブのサポートも含まれている。
とりあえず、ここでは言及しないでおく。
少しして、ようやくの頭が働きはじめた頃。
―計られた…!と唐突に思った。
「よろしく頼むって、一体私に何の協力を求めてるの…。
第一、沢田綱吉ってあの沢田よね?」
『沢田綱吉』記憶にもまだ新しい、最近教え子に加わった並盛中の生徒の一人。
―通称ダメツナ。
そのそのダメっぷりはクラスメイトの御墨付き。
最近、何かと学校を騒がせる、渦中の人物でもある。
「そういえば、獄寺が『10代目ー』とか呼んでたっけ…」
―まさかボンゴレのボス10代目だとは、誰も思うまい。
―そして、リボーンが家庭教師となると……
前生徒同様、超過激・スパルタ指導であることはまず間違いない。
「ご愁傷様、沢田…」
それだけ目を掛けているということは一目瞭然だが…しかし。
気の毒なことには変わりない。
「このままだと確実に、巻き込まれるわねぇ…」
『よろしく』ということはつまりそういうことだ。
―逆らったが最後。
無事に明日の夜明けを迎えられる保証はない。
つまり、これは拒否権がないに等しい、脅迫紛いの話なのだ。
「こういうのは諦めが肝心、かなぁ…」
どう足掻いてもトラブルに巻き込まれるのなら、
いっそ事前の心構えを持って挑んだ方がマシだ。
「面倒事は嫌いなんだけど…毒を食らわば皿までって言うしねぇ?」
かなり無理やりにであるが、許容範囲内ということにしておこう。
「…でもね、ボブ。私を計ったこと覚えてなさいよ?」
黒い笑みを浮かべつつ、は手紙から目を離した。
これからのことを考えながらそれを封筒に戻し、静かに自室を後にした。
―その頃ボブは言い知れぬ寒気を感じていた。
…かは定かではない。
―翌日
「…さて、どうしようか。」
学校へ出勤中の現在。
指示通りに『よろしく』するために接触しようかと考えていたのだが。
…実際どうすればいいのか、にはさっぱり見当がつかなかった。
手始めに、リボーンに会おうにもまさか生徒の自宅に押しかけるわけにはいかない。
というよりも、今更『実は私、裏世界の者なんです。』
なんて、このタイミングで言えるわけがない。
今までただの安月給の新米公務員…もと言い教科担任だと思っていた人物が、
まさかマフィア関係者だと知ったら、きっと人間不信になるだろう。多分。
だったら確実にクラスメイトを片っ端から疑ってかかる。
「…あ、でも獄寺はマフィアか」
そう、クラスメイトの一人はすでに裏世界の住人である。
―…それなら、それほど衝撃は受けないかな?
うーん、と一人悶々と考えて、溜め息をついた。
―何故ここまでツナのことを心配するのか。
それはの弟・有利と、あまりにも境遇が似ているからであった。
かたや異世界の魔王。かたやマフィア界のゴットファーザー。
それが世襲で継がれるのならまだわかる。
しかしどちらも、どこにでもいるような極普通の一般家庭生まれ。
そんな要素は全くなかったはずだった。しかし蓋を開けて見ると実は黒。
あれよあれよという間に現在に至り、ある意味シンデレラストーリー?より飛躍している。
……フツーは、ありえない。
「十代にして波乱万丈な人生よね…」
ある意味災難としか言えない。
そんな二人の顔が、の頭に浮かぶ。
「……規格外なのは、私も変わらない…か」
何故だかいろいろな意味で悲しくなり、ポツリと独り言のように呟く。
「チャオ」
「チャオ……」
条件反射で返してしまったが、よく考えるとここは日本だ。
哀愁に浸る間もなく、声のする方に勢いよく振り向く。
と、そこにはよく見知った人物がいた。
「日本では初めて会うな。元気にしてたか?。」
「り、リボーン…」
久しぶり過ぎてすっかり忘れていたが、用意周到な彼のことだ。
がこの学校に居ることに、気付いていないはずがない。
「ナイスタイミング…」
言ってはみたが、なんだか自分が情けなくなり、はガクリと肩を落とした。
「ボブから連絡は来たのか?」
「……つい先日」
「そうか。これからお前もツナを鍛えるために協力するんだぞ」
「仕事に支障が出ない程度に、ね。」
逆らう気力など端からない。
しかし新米とはいえ一応教師。職務放棄はできない。
だからこれはほんの僅かな抵抗である。
「まぁ、は元を正せばボブの部下だからな。無理強いはしないぞ。」
「ありがとう」
内心かなりホッとしつつ、息を吐いた。
「ところで。」
リボーンがの肩に乗っかった。
「お前、風紀委員の顧問になったそうだな。」
ボトッと、アスファルトの上にカバンが落ちた。
それはもちろんのもので、当の本人は顔を大いに引きつらせていた。
「えぇっと…、それとこれと、何の関係が?」
嫌な予感がの脳裏を過ぎる。
「委員長の雲雀に興味がな。一応、ファミリーの候補として目をつけてるぞ。」
『雲雀』という言葉にはピキリと固まった。
どうやら予感のど真ん中的中どころか、それを通り越して貫通してしまったようだ。
「ファ…ファミリー…?」
―あの戦闘狂……が?
「そのうち顔出しに行くからよろしくな。」
何か用事を思い出したらしい。
の肩から飛び下りると、あっという間にどこかへと消えてしまった。
神出鬼没であり、相手に気づかせないよう風のように去る。
どうやらこれも彼の美学であるらしい。
はっ…とが反論しようとしたときにはすでに、リボーンの陰形はどこにもなかった。
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