「―あ、一護!」
「……?」
―現世にて
久方ぶりに幼馴染の姿を見た。
最後に会ったのはそう、向こうでのことだ。
一応まだ夏休みではあるが、色々と大変だった時期を思い出す。
ほんの1年前の夏休みとは比べ物にならないほど慌しい、濃密な時間を過ごした日々。
瀕死状態になること数回。
―俺以上にこんな凄い夏休みの過ごし方をした奴はいないだろう。
そう思えるくらい、壮絶な体験をした。
―そしてこの幼馴染の 。
幼馴染という言葉そのままに、小さい頃を一緒に過ごしてきたわけだが、
こいつも『壮絶な夏休み』の関係者の一人だった。
関係性からいえば、俺よりも深いところに関わっているのだろう。
ただ、訳有りすぎて、正直俺にもよくわからない。
言える事があるとすれば、こいつにはもう一つ『』という名前があるということ。
それと、向こうにも家族がいるということくらいだ。
「久しぶり!元気だったー?……ユズとカリンが。」
「って、おい。俺じゃねぇのかよ!」
「うん、今更。そのツッコミも久々だねぇ……」
―狙ってやったらしい。
相変わらずな幼馴染に一護はガクリと肩を落としたが、気を取り直して口を開いた。
「そういえば、向こうはもういいのかよ?」
「えっ?あー、うん……今日はその、息抜き?みたいな……」
「……抜け出してきたのか。」
「うん。」
あっさりと肯定するに、一護は軽く頭痛がした。
これで精神年齢は優に100は越えているというのだから、
―人間って不思議だ。と一護は常々思う。
というよりも、の場合は絶対に老成ではなく、幼児退化現象が起きているに違いない。
「……何かあったのか?」
「そいういわけじゃないよ。」
―嘘はついてないようだ。
は昔から嘘をつくのが下手だったから。
いや、嘘をつけない性質なのだろう。目を見ればすぐに分かる。
「じゃぁ、浮竹さんたちとはちゃんと上手くいってるんだな?」
「うん……まぁ、ね。」
面と向かってそう聞かれて、どうやら照れくさかったらしい。
少しだけはにかんで笑うその顔は、一護も久しく見ていない表情だった。
「んじゃぁ、お前本当にただの気まぐれでこっちに来たのかよ?
あっちもまだ、忙しいんだろう?」
「うっ、そうだけど……」
すると、の表情がわずかに曇った。
「浮竹さんたちも、心配してんじゃねぇか?」
「あー、うん。もとから長居するつもりはないよ。」
「……、お前本当に何しに来たんだ?」
の行動が突拍子がないのは、いつものこと。
そう言えばそうなのだが、時間や労力を考えると何だからしくない気がしてならなかった。
それも幼馴染ならではの勘でしかないが。
一応、時と場合を考慮する分別も持ち合わせていたはずなのに。
と、つい責めるような口調でそう言ってしまった一護を、はしかめっ面で見上げた。
「…………に………た……よ。」
「……悪い、聞きとれな……」
「ーっ!!だーかーら!一護に会いに来たんだよっ!悪い!?」
「……いや、悪くはないけど。」
逆切れとも言えるの発言。
しかし、が怒るのも珍しいため、一護は大きく目を見開いた。
「っ向こうに居たときは、忙しくてちゃんと話す機会も無かったし、
自分の口でちゃんと全部説明したかったんだよ!さっさと気づけこの鈍感め!!」
「……あ、いや、その……悪かった。」
―なんで俺、謝ってんだ?
の気迫に押され、つい謝罪してしまった。
―……というか、俺に会いに来るためにわざわざ来たのか?
態々、忙しい中……
「いや別に、俺は急いでないから。お前、無理すんなよ。」
「……無理してない。というか私が嫌だ。」
「……?」
「一護に黙ってるのが嫌だったの!今までもずっと黙ってたし……ごめん。」
シュン、としたの様子に自然と一護の眉尻が下がった。
―今までで一番らしくねぇ、こいつ……
「あのなぁ。そりゃぁお前が死神で、しかも息子までいたのは驚いたけど。
ちゃんと理由があったんだろ?それはわかってるから。
そう簡単に嫌いになったりしないっつーの。いい加減分かれよ。」
「うん……ありがとう。」
大切な人に対して、こんなにも臆病になるのは、
今まで辿ってきたのの人生が、あまりにも過酷だったからなのだろう。
いつも自信満々のくせに、変なところで躊躇する。
「……気にすんなって。で、今日はあんまり時間ないんだろ?
だったら、説明はまた今度でいいからウチに顔出してけよ。」
「……いいの?」
「聞くなこのバカ。お前の帰る家だろうが。」
「……じゃぁ、ちょっとだけ……帰ろうかな。」
の頭をワシャワシャと撫で回すと、その腕を掴んで一護が歩き出した。
「こうやって帰るの、小学生以来だな……」
「そうだね……一護って格好付けしいだから、
たまに、すごく恥ずかしいこと平気でやるよね。」
「っこの野郎……!!」
調子を取り戻したらしいが小さく笑った。
色々と疲れた顔をした一護だったが、ふと何かを思い出したようにを見返した。
「あぁ、そうだ。お前……元気だった、か?」
「うん、元気だったよ。……一護は?」
「おう、元気だったぜ。」
「そっか。」
―これって結構今更なかんじ、だよねぇ?
いや、だって素直じゃないんですよ。
そんな二人は幼馴染で、家族ですから。