改革推進初心表明






―入学式



 各クラスでの説明も終わり、その場で解散となった。



『特進クラス』



この当時は、学院が出来て間もないということもあり、貴族出身者が過半数を占めていた。



基本は今も昔も同じく、入学前の成績順で分けられる。

しかし、その成績をつけるためのテストには少々片寄りがあった。

あらかじめ、ある程度の知識を得られる環境で育った貴族出身者と、

そんな環境とは無縁の独学の者が多い流魂街出身者。

双方に差が出てしまうような内容であった。



後にそれは改善されることとなるのだが、それは学院を卒業したある流魂街出身者の進言と、

同じく学院を卒業した貴族出身者らの働きかけがあったからだという。



―さて、そんな中……



の入試成績は申し分なく良かった。



なので『特進クラス』に入ることになったわけだが……

周りは貴族のお坊ちゃん、お嬢さんだらけ。

お世辞にも居心地が良いとは、とてもじゃないが言えなかった。



―あからさまに、奇異なものを見るような数多の視線。



……正直ウザい。



その理由の一つとしてはもちろん、流魂街出身者ということもある。

しかし、この学院創設者・山本元柳斎重圀の養女であることが何よりの要因であった。



―……コネかよ。


―流魂街出身のくせに。


―仲良くしとけば楽に卒業させてくれるんじゃない?


―少し霊力があるからって、いい気になってんじゃないわよ。


―うちの親が顔売っとけ、ってさぁ……



は密かに溜息をついた。



このような状況を予想していなかったわけじゃない。

両親が死ぬまでは一応、瀞霊廷の中で暮らして居たのだ。

貴族の中にも、こういう者たちがいることを当然知っていた。



―その言葉が直に、自分の身に降りかかってきたことは……まぁ、はじめてだけれど。



流魂街で死にそうな目にあったことと比べたら、屁でもない。

慣れるまでに時間はかかるだろうが、自分のことを思い、

入学させてくれた元柳斎のことを思えば、気にはならなかった。





ただ、すぐ帰る気にもなれず、はぼんやりと窓の外を眺めていた。

窓越しに降り注ぐ、柔らかい日差しがとても気持ちよかった。



























―あれから約一年



その間、算術や読み書きなどを徹底してやらされた。



他にも琴や舞踊なども教養の一貫として習い、下手な貴族の令嬢よりハードな毎日を送っていた。

おかげでいつでも嫁に行ける状態になった……というのはさておき。



栄養失調で痩せこけていた頬もふっくらとし、あまり高くなかった身長もグングンと伸びた。

肩口までしかなかった髪も、今では高く結わえることができるようになっていた。



―そう、何もかもが著しく変わった一年



それは今日、これからを過ごしていくための、言わば準備期間でしかなかった。



―重圀様は何かを急いでいるようだったけれど……



その理由がにはわからなかったが、予定より学院への入学時期を早めたのは確からしい。



ただも優秀で、教えられたことをすぐに吸収していったため、

入学自体に無理はなかったらしいが。

つまるところ、特進クラスに入ったのは実力でしかないのだ。



―何かがあるかもしれないし、ないかもしれない。



―良いことばかりでなく、悪いこともあるだろう。



それでも期待に胸が踊っていたのは事実であり、このクラスへの第一印象がどれほど悪かろうと、

その気持ちは変わらなかった。



「―楽しくなければ、楽しくすればいいよね……」



何事も自分で動かなければ変わらないことをは知っていた。



元柳斎はこの学院を創設し、何を目指したのか。

それをこの一年、は自分なりに考え受け止めていた。



―……少しでも、拾ってもらった恩を返したかったから。



何が一番元柳斎のためになるかを考えた。

しかし、今のに出来ることなど限られている。



―だから今すぐ返すことは諦めた。



そこで長期的なものに視野を広げ、辿り着いたのは半永久的に役に立てる道。



―さぁ、始めようか。






山本 の『学院改革推進レポート』をここから記していこうと思う。